2015年5月31日日曜日

フラッシュのコマンダー光をカット - フジフイルム 光吸収・赤外線透過フィルター IR-92

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フジフイルム 光吸収・赤外線透過フィルター IR-92 7.5x7.5cm

フラッシュをリモート(ワイヤレス)発光で使う場合、カメラボディーについているフラッシュを発光させず、コマンダーのみとして使うことが多いと思います。

ところが、コマンダーのみとして使用してもフラッシュは通信のための発光は行います。この光の影響は、ポートレートだと無視できるのですが、ブツ撮りすると被写体に光が当たっていることが分かることが多いです。

そこで、このコマンダー光の影響を無くす(軽減)するために、ちょっとした工作をしました。

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オリンパス フラッシュ FL-LM2にIR-92を雑に貼付

コマンダー光の弊害

コマンダー光がブツ撮りで影響するというのは私はなかなか気づきませんでした。blogに載せるために撮った、紙(本の表紙やカタログ、配布物など)、商品のパッケージをみると、光の反射が写っていることが多くありました。私はてっきりリモートに配置したフラッシュの位置が悪くて反射しているのだと思っていたのですが、なかなか反射が消せませんでした。

そうこうしているうちに、やっと「これは通信のためのコマンダーの光のせいだ」と気づきました。

内蔵フラッシュや同梱フラッシュは発光部の方向を変えることが出来ないので必ず被写体へまっすぐ発光してしまいます。クリップオンストロボの場合だと天井バウンスする方向に首を振れば回避することも出来るかもしれません。しかし、コマンダーというのは内蔵フラッシュを使ってお手軽にできるから便利だったりします。

フラッシュの通信の原理

フラッシュがリモートで通信するのは、フラッシュの「光」そのもので行っています。

この受光はフォトダイオードでやっているはずです(現代だとこの部品を選択するのが最も普通)。フォトダイオードは可視光だけではなく赤外線まで感度があります。

家電のリモコンの受光部がこの能力を使っていて、赤外線で通信をしています。赤外線なので人間には何も見えないのですが、実は「ピカピカ」光って通信しているのです。受光側が可視光を拾ってしまうと誤動作してしまうので、受光側には赤外線しか通さないフィルター(プラ)のフタをしてあります。赤外線しか通さないということは目で見ると黒く見えることになります。なので家電のリモコンの受光部は目立たないのです。よくみると正面のどこかに小さな丸か四角の黒い「窓」がありますが、この奥にリモコン受光用のフォトダイオードが隠れています。

写真は通常可視光で撮っています。人間の目で見えたものを見えたように記録しているわけです。従ってコマンダー光のうち可視光線だけカットし、赤外線だけを通せば、通信はできるが写真には影響しない(写らない)ようにできることになります。このことはフラッシュのセミナーでも質問すると教えてもらえます。

しかし、意外と具体的なことは教えてもらえません(「フィルター買ってくればいいんだよ」)。

ヨドバシカメラの或る店舗でたずねた時も、まずフラッシュに詳しい店員がいません。次に出てきた店員がキヤノン、ニコンしか知らないので「オリンパスがどうなってるかしらない」と言い切る始末(というかこんなことを言うってことは彼はコマンダー光をカットして撮影したことがないという証左だろう)。最後に「フラッシュの仕様が不明だから、どんなフィルターを使えばいいかわからない」、まあ一言で言えば門前払いというかなんというか。

ネットを検索してみたのですが、意外とひっかかるblogは少ない。具体的にどんなフィルターを買ったのか明示されてないことも多い。

赤外線とは?

赤外線とはどんな波長かを調べてみました:

大体780 nmナノメートル (0.78 μmミクロン)より長い波長が赤外線となります。

つまりこれは、780 nmより短い波長をカットすれば、写真に影響しないということになります。

フラッシュ光の波長の範囲は?

フラッシュのスペクトルを調べてみました:

これをみると赤外線である780 nmより長い波長まで十分強い光が出ています。ですから可視光をカットしても赤外線部分だけでそれなりの光量が通信として使えるはずです。

赤外線通信が使う波長は?

フラッシュは赤外線のみで通信しているわけではなく、波長は全然気にしていない(可視光を使ってる)結果赤外線だけに限定してしまっても通信出来るというのがほんとうのところだろうと思います。

それでは、積極的に赤外線で通信している家電のリモコンはどこらへんの波長を使っているのか、参考までに調べてみました:

これを読むと

  • 940〜950 nmが家電のリモコンで
  • 850〜900 nmがIrDAで

使われているということが書かれています。

家電のリモコンとIrDAの波長が違うのは偶然ではなく、多分お互いに影響しないようにするためにずらしてあるのではないでしょうか。

フィルターの選定

赤外線だけを通すフィルターというのは、売られているのか、それはどんなものかと調べてみると、フジフイルムが写真用として割と普通に売っていました:

画面右にある「富士フィルターの表示について」をみると、型番の数字を10倍すると波長(nm)になることがわかります。この波長より長い波長だけを透過することになります。

家電のリモコンが940 nm以上なことと合わせて、これらの口コミも参考にしてみました:

これらから、920 nm以上を透過するIR-92を買ってみました。サイズの最小は7.5cm x 7.5cmですが、発光窓を覆うだけなので、オリンパスとパナソニックの二、三台の内蔵フラッシュに使ってもこれで十分そうです。

フィルターの装着工作

フィルターはハサミで簡単に切れました。FL-LM3の発光窓を覆う大きさに、適当にハサミで切り、パーマセルテープで雑に止めてみました。

口コミを見ると、フィルターを密着させると発光時の熱がこもってフィルターの変形、フラッシュの変形を経験したと書いている人がいます。私が検索した中でこれが言われているのはこの一件だけです。ストロボのディフーザーキャップが大きなフタになっていて発光窓から離れているのは放熱のためかもしれません。

万全を期すためには、大きくカットして「⊂」状にカーブさせて発光窓から離れるようにしてテープで留めるとよいかもしれません。その場合両脇から光がもれないようにフィルターを少し幅広にカットした方がよいかもしれないなあ、と思ったりします。

連写による発熱に注意するということで、先に掲げた写真のように発光窓に密着するかたちで取り付けました。

パーマセルテープで結構前面が隠されていますが、十分通信出来ました。ブツ撮りの場合の対策なので、リモートフラッシュがそれほど離れていませんし、室内なので通信光もよく乱反射するので、パーマセルテープによる光量低下もほとんど悪影響を及ぼしていないようです。

効果確認

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フィルター未使用 TTL 調光補正 +2 EV
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光吸収・赤外線透過フィルター IR-92 使用 TTL 調光補正 +2 EV
フラッシュ FL-LM2 コマンダーとして使用時

フィルター未使用の場合、包装のビニールがテカっているのがわかります。また、TTLなのに露出が暗い。ここでは+2 EVまで調光補正をしているのに非常に暗く写っています。通信光がTTLの露出計算に影響して間違った露出になっているということでしょうか。

フィルターを貼り付けると、包装のビニールのテカりは見事に消えています。また露出も適切になっています。

これは非常に効果があったと判定出来ます。あとは熱がこもる可能性について注意しながら使うことだとなります。

付録: ニコン SG-3IR

ニコンに、ホットシューに取り付けてポップアップした内蔵フラッシュの前面に赤外線透過板を掲げて可視光をカットする「内蔵フラッシュ用IRパネル SG-3IR」と言う商品があります。

ホットシューに取り付ける形なので、他社製品でも使える場合があります。それらのblogをリストしておきます。

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