2014年3月30日日曜日

ライティングセミナー大浦タケシのブツ撮りのヒミツ @ニッシンジャパン

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カメラのレンズ部分がガラスっぽく光沢が出ているように撮る: 他の参加者の方が持ってきたハッセルブラッド

3月29日(土)に、玄光社 カメラファン誌主催のセミナー「大浦タケシのブツ撮りのヒミツ 〜クリップオンストロボ1灯で本格ワイヤレスライティング〜」(魚拓)に ニッシンジャパン本社のセミナー室で参加してきました。

講師は大浦タケシ先生。他にアシスタントとして玄光社フォトテクニックデジタル編集部 兼 Camera fanの いとう さん。 さらにストロボの貸出、サポートにニッシンジャパンの方々がついてくださいました。

定員は20人で、満員締め切りになったのですが、受付名簿をみたら21人いるような感じでした。女性はカップルで参加の一人のみ。老人はいませんでした。カメラは、募集自体がキヤノンとニコンということでしたのでキヤノンとニコンがほぼ同数で多数でしたが、それ以外のユーザーが4人。その一人が私ですが。今回はオリンパス OM-D E-M1で参加。パナソニック機では対応できないと言われるんじゃないか?と弱気になったのでした。実際にはキヤノン、ニコン以外のユーザーは、ストロボをマニュアルモードで使用したので、標準的なホットシューがあれば問題なかったはずですからパナソニック機でも動作したはずです。

この「その他メーカーグループ」は、大浦タケシ先生から「このグループが一番(メンバーの個性が)おもしろい」といきなり言われましたが(笑)、確かにすごくて、なんとソニーのα99が二人。しかもそのうち一人は撮影には使いませんでしたがα7も持ってきている。もう一人の方はフィルムのハッセルブラッド+ツァイスレンズを持ってきている上に、α99にもマウントアダプターを介してハッセルブラッドのレンズをつけての、手動絞り/実絞り測光にMF。もうひとりはペンタックスの一眼レフ(私は詳しくないので機種不明)ですが、大浦先生がレンズがめずらしいと言っていました。ソニーα99の一人はなぜか三脚まで持ってきていて、雲台が梅本製作所

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上野ビル入口のニッシンジャパン案内板

20人中4人がキヤノン、ニコン以外ということは20%。ミラーレスは1/20で5%(正確には、キヤノン、ニコンユーザーがミラーレスを持ってきているかどうか調べてはいない)。α7を持ってきたひともいれると10%。もともとキヤノン、ニコン中心の募集でしたから遠慮してしまった人もいるでしょうから、ミラーレスが5%〜10%というのは案外多いんじゃないでしょうか。 放課後にアシスタントをしていたニッシンジャパンの人と話していた時にいっしょに話していた他の参加者(キヤノンかニコン)も、フジを持っていると言っていましたし。

講義

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セミナールームでの講義

セミナーのテーマは1灯でやる(やれる)ライティング。まずは1灯+レフ+ディフューザーが基本となるからです。

フラッシュはニッシンジャパンからニッシンジャパンのDi866 MarkIIが全員に貸し出されました。最初に各メーカーごとのフラッシュの設定、カメラの設定をやりました。これは簡単。このフラッシュを使うのかと思いきや、使わず。 つまりこの貸し出されたフラッシュはこのあとセミナールームの各自のテーブルの上に置きっぱなしにされ、実習は、スタジオで既にセットアップされたフラッシュを使いました。キヤノン、ニコンユーザーはリモートTTLで。「その他メーカー」はフラッシュはマニュアル設定、リモート発光させるための無線のユニットをフラッシュ側とカメラ側につけて撮影しました。 カメラ側の無線ユニットは一台だけなのでこれをメンバー内で付け外しして共有して撮影。

ということで、私のカメラはMモードに設定し、無線ユニットの制約からシャッタースピード 1/125s(E-M1自体は同調速度は1/320s〜1/250s)に設定。被写界深度的にF11に設定(内容によってはF16くらいまで試してみました)。ISO 200(E-M1の基準値)。この状態で今回の場合フラッシュの発光量は全開の1/16〜1/32の間になりました。

フラッシュ撮影のメリット

定常光(ライト)を使わずにフラッシュで撮影する場合のメリットと言われたのは、シャッタースピードが高速なのでフラッシュは閃光時間が非常に短くそれが事実上のシャッタースピードになるので手持ち撮影できること。確かに定常光だと高級なライトシステム(=非常に明るい)を使わない限り暗く、そこでISO 200、F11ではシャッタースピードが数分1秒〜数秒になることはざらですので三脚が必須です。

また光量が大きく、シャッタースピードも高速のため室内の蛍光灯などの定常光はほとんど影響しない。そのため室内は電灯を点けたままで作業できる。確かに、アマチュア向けのLEDライトやデスクスタンド的な定常光の場合だと天井の蛍光灯や白熱電灯の色がまざり、ホワイトバランスのずれや写り込みが出ます。 ですから撮影時には電灯を消すことで室内が真っ暗に出来る夜にやるほうがやりやすい。昼間だと窓からカーテンの色がついた太陽光が混ざってしまいがちです。

レンズ選択

ブツ撮りは基本は35mm判換算で100mm前後(中望遠)で。事前の持ち物指示では標準ズーム、35mmm判換算で60〜100mmのマクロレンズ単焦点かズームか、中望遠ズームレンズと言われました。 これより広角だと歪む(パースがつく)のであまり一般的ではないが、フィギュアや模型では表現として遠近感を出すために広角レンズを使うのもあり。超望遠だと被写体から距離を離さないと撮れないため室内では使いづらい。

単焦点レンズとズームでは、多くの場合ズームのほうが寄れる(ワーキングディスタンスが短い)ので、ズームのほうがよい。マクロレンズなら寄れるので単焦点レンズでもよい。

ブツ撮りはマクロレンズだとばかり思っていたのですが、ブツ撮りくらいだとそこまで倍率が必要ないので標準レンズや標準ズームでも構わない(マクロレンズでなくてもよい)というのは先日の薮田先生のセミナーでも言われていました。

今回私は、フォーサーズの35mmマクロ(換算70mm)、マイクロフォーサーズの60mmマクロ(換算120mm)、それと行き帰りの撮影にも備えてマイクロフォーサーズの12-40mmズーム(換算28-80mm。簡易マクロ)を持って行きました。

使った感じだと35mmだと近づきすぎる感じでやや作業が窮屈、60mmだと少し離れないといけなくて自宅だと場所が取れないかもしれないなと思いました。50mm辺りがちょうどよいのかもしれません。ただ今まで自分で撮っていた時は35mm〜40mmでちょうどよい感じでしたが。

ミラーレス機の設定の注意

ミラーレス機でのカメラボディー側の設定の注意点は、EVF/背面モニターのライブビューに対して「LVブースト」(オリンパス機の場合の名称)をオンにすること。「LVブースト」は、カメラの露出設定にかかわらずライブビューが一定の明るさで見えるようにする機能です。 「LVブースト」をオフにすると、例えばEV補正をするとそれにあわせてライブビューの明るさも変わります。通常はオフで使うと思いますが(撮影前にみているライブビューが撮影結果と同じ露出になるのでミラーレスのメリットになる)、フラッシュ撮影の場合フラッシュが点灯した瞬間に適正露出になるようにカメラが設定されています。 つまり構図を決めているときは超アンダーなためライブビューは真っ暗で何も見えません。これでは構図を決めるのに支障をきたします。「LVブースト」をオンにすれば、露出設定にかかわらず普通の見易い明るさのライブビューになります。一眼レフの場合は開放測光なのでファインダーは絞り開放で見えているので、暗くなりません。

カメラもフラッシュも、マニュアル設定での撮影というのは難しいのではないかと思いましたが、最初に、二、三枚撮影して背面モニターでみながらフラッシュの光量を調整すれば簡単に露出が決まりました。

先生の模範解答

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受講生持参のサプリメントのびんの撮影

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カメラの撮影

実技が終わった後に、事前に希望者が持ってきたものをいくつか先生が撮って見せてくれました。受講生から「こういうところがうまくいかない」「こんな感じにきれいに撮りたい」という質問が出て、それが難しくて2灯になったりしました。

カメラのレンズのガラスの感じをカタログ写真みたいに撮るには

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受講生持参のハッセルブラッドのレンズをきれいに写す

カメラのカタログなどではレンズが緑色とかに光って写っています。この感じはライティングを工夫しないと出ませんが、実技で自分たちで色々ライティング(レフ板)を工夫してもうまく行きませんでした。強く反射した部分がいびつに出るだけで、カタログのようにうっすら楕円形に光るように出来ませんでした。

先生に教えてもらって撮ったのが冒頭のハッセルブラッドです(ソニーα99で参加した方が持ってきていたハッセルブラッド)。再度模範解答の時にお願いして撮ってもらった様子が上の写真。

ポイントはレンズに光を当てるためにレフ板を使わず背景紙をめくり上げて使っていること。背景紙をめくると反射面にアールがつくことがポイント。レフ板の場合四角い板なので、底面の背景紙とレフ板との境目の鋭角の部分がレンズに線状に写り込んでしまうことがあるそうです。

一眼レフ機を被写体にした場合ファインダー側からレンズへ光が逆行して写り込む場合があるので黒テープ(パーマセルテープ)をファインダーに貼って塞いでしまうなどします。レンズのガラス感がどうも変でレフ板などを調整しても解消されない時はこのファインダーからの逆行を疑ってみる必要があります。

Photoshopでの処理

どうやってもテカってしまう部分(典型はミニカーのフロントガラス)が出てしまう場合、テカってしまう部分のテカリが消えるライティングをしてもう一枚撮り、最初の一枚とあわせて、Photoshopでレイヤーに重ねて、合成するという手を使います。

また、前述のカメラのレンズなども、レンズ部分のガラスの光具合を少し強調したほうが感じが出るため、Photoshopで全体を明るくした写真を作り、元の写真とレイヤーを重ね、レンズ部分だけ「マグネット選択」できれいに選択し、選択状態で「消しゴム」を使うと選択範囲内だけが消せるのでこうやって明るくしたレイヤーを出してやることでボディーとレンズの明るさのバランスを変えてしまいます。

他に、AF補助光のプラカバーやマウントの赤いドットだけ明るくしたレイヤーが出るように(通常露出のレイヤーを消しゴムで消す)して赤ドットを強調してやると、写真がすごくよく見えます。

雑誌の写真などはほとんどPhotoshopでのレタッチが入っているようです。

実技結果

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私達のグループが使った環境

後は、スタジオのセット

このような状態で、レフ板を一枚か二枚他の受講生が持って撮影して実技を行っていきました。フラッシュは真上から、ややカメラ方向へ傾けて、被写体には頭越しに斜めに当たるように。こうすると背景にグラデーションがつく。 フラッシュ(ソフトボックス)はかなり接近させて。接近させるほど影がソフトになる(光の当たり方が平行光に近づく)。

ライトスタンドからアームが伸びていて重心がずれるので、ライトスタンドが倒れやすくなりますのでアームと反対側のライトスタンドの足におもりを付けます。 写真機材用の錘も売っていて、今回それを装着したライトスタンドもありましたが、汎用品で売られているカメラ/レンズポーチに使用済み単三電池(フラッシュを使うと出てくる)を沢山詰め込んだものも使っていました。

乾電池はかなり密度が濃く、集めると結構重くなりました。他にペットボトルに水を入れて養生テープで括りつけるという手もあります。水ですと乾電池よりかなり大きくないと十分な重さが得られないようです。ロケなどでは現地で水を入れ、使い終わったら水を捨てて場合によってはペットボトルも潰して捨ててしまうというやり方も出来ます。

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フラッシュ無し(室内照明のみ)

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フラッシュ+レフ板左

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フラッシュ+レフ板左右

カメラ

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レフ板無し

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レフ板左

フロント部分の陰がなくなって明るくなり、下に映る影も柔らかくなった

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レフ板左右

車体左側面、特に車体後部が軽く明るくなり車体全体が均一な明るさになった

ミニカー

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撮影風景

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黒レフ板左右

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白レフ板左右

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斜め上から撮影 白レフ板左右

失敗例: 全体銀色 (ディフューザーの一種 - グリッド)

最後の例は失敗例。全体銀色というのは難しいそうで、先生も「うーん、これは難しいね」とおっしゃってました。周囲をトレーシングペーパーで囲み、場合によったら正面に銀レフ置き、穴を開けてレンズだけ覗かせて撮るとか、と言われました。

感想

20人も参加して実技はどうなるのかな、と思いましたが広いスタジオを使って同時に4箇所ほどに別れて進行出来たために十分余裕があって実習できました。ニッシンジャパンの方が二人機材のサポートについてくださり、非常に円滑に進みました。

講義もMac上の資料、データがよく準備されていて非常にスムーズでしたし、玄光社のいとうさんがアシスタントとしてMacの操作と進行を行ったので大変効率的でした。またカメラとMacがテザリングしてあり、模範解答では撮影すると即座にプロジェクターで結果がみられ非常にわかりやすかったです。運営・進行はかなりハイレベルでした。

配布物は、プレゼン資料の印刷版、ニッシンのカタログ、ニッシンダイレクトの購入リスト、今回の機材のキット販売、さらに玄光社の雑誌付録だったらしきポーチ、玄光社出版目録でした。

最後にニッシンジャパンからニッシンジャパン社自体の宣伝(フラッシュを自社設計製造しているのはニッシンジャパン含め世界で四社だけ。カメラメーカーも全部OEMを受けている。ニッシンジャパンは50年以上フラッシュを設計製造続けている)と製品の宣伝がありましたが、今回は先日発表されたi40について少し詳しく機能説明があったのは結構大きな収穫でした。 CP+では説明が何もなくて動作する試作品がおいてあるだけでしたし、マイクロフォーサーズ版については何もわかっていなかったです。今回は「マイクロフォーサーズ版も同じですか?」というような質問が出来ました。

i40のキヤノン版、ニコン版はまだ発売日(4月中の予定)、値段(2万円辺り)とも詳細は未定。ホームページに製品ページが設置されました。マイクロフォーサーズ版、ソニー版についても発売日未定のまま。

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