2013年12月15日日曜日

モニターのカラーキャリブレーション - x-rite社ColorMunki Display購入

ColorMunki

キャリブレーションのためにセットした状態

モニターのカラーキャリブレーションをしてみることにしました。

高価なモニターにキャリブレーション機能が内蔵されているものがあるので、カラーキャリブレーションは高級モニターでしか出来ないと思い込んでいたのですが、調べてみると外付けのキャリブレーターに安いものがあります。

しかし、色々検索したのですが、キャリブレーターを取り上げているニュース系サイトのコラムや新製品紹介記事、個人blogがほぼ全くない。あっても二年〜五年前のものばかり。これはすごく面白い現象です。カメラの評価や現像の「色」には細かいことを気にするのに、モニターのキャリブレーションは誰も興味を示してないだって?

これは英語のサイトを検索しても同じ。

ということで何を買ったらいいのか、実際使ってみるとどんな評価なのかほとんど情報がない中、 迷っていてもしょうがないので数少ない情報からColorMunki Display(カラーモンキー・ディスプレイ)x-rite社)に決断しました。

x-riteはカラーチャートのPantoneも出しているので、それがいいかな、程度の決定理由でした。

x-riteでもi1というシリーズとMunkiというシリーズの二つにわかれていて、何が違うのかよくわからない。高いのを買っておけば間違いないが、やっぱり高いなあ…(カメラになら十数万円〜何十万円も出してるくせに)。 高級機ではカラーセンサーに高精度なものを使っているという差もあるようだけど、色々印刷のプロに必要な機能がついているという差もあるようで、そこは一般ユーザーにはいらないのではないか?

普通のユーザーだと調整したいのは、ガンマ2.2、色温度6500度K、あと直線性(これはD/Aコンバーター用語。写真の用語だと「階調」か?)程度ではないか? 中級機以上だと「どれくらいずれてるか(ここまでしか追い込めなかったよこのモニターでは)」をグラフ表示とかしてくれるようだ。これをみれば「ああ安物モニターなんだな。買い換えようか」とわかるのでいいかもしれないが、ここも割り切って気にしないことに。

インストール

外箱

内容物(他に取扱説明書、CD-ROM、保証書)

マニュアル

マニュアルは多国語仕様で寡黙なのであんまり親切ではない。ただ基本的には設定ソフトが画面に出す指示のとおりにやればいいようになっているので、問題はないです。マニュアルの役割は二つで:

  • ColorMunkiのカバーを回して「モニター測定状態」「環境光測定状態」「プロジェクター測定状態」にセットする方法を理解すること
  • ColorMunkiをUSBに「挿さず」に、付属のCD-ROMからアプリをインストールすること

を伝えることだけ。

カバーの位置についてはアプリの画面でも一応イラストで出ます。カバーに位置センサーがついているようで正しい位置にセットしてないと画面に「☓」が出て先へ進めないようになっています。

またセンサユニットの両側面に白色LEDが埋め込まれていて、各段階での測定中はゆっくり点滅していますが、カバー位置の変更や何かアプリの指示に応える必要がある時は速く点滅します。

カバーの回し方は環境光測定状態(しまう時もこの状態: センサーにカバーがかかるから)から、引っ張ってロックを外して回す、押し込んで「カチッ」っとロックして元に戻す。それ以外の状態は「カチっとロックはない」。これらはマニュアルの文章と図を読んだほうが理解しやすいので、合計数行の内容なのでマニュアルは目を通しておきましょう。

インストール

アプリのインストールはものすごく時間がかかり、15分位かかっていました。インストールが終わって起動すると「バージョンアップがある」と言われ、またインストールとなりました。

さらに、Mac OS X Mavericksについて、ドライバーをアップデートしろとホームページにありますが、先ほどの自動アップデートとの関係が不明ですし、インストールされているドライバーのバージョンを確認する方法もわかりません。

文章もイマイチ変で(手動ダウンロードは、ネットにつながってない時だと書いてあるが、自動アップデート検出は新しいドライバーを入れないと入っていない機能だと言っていて矛盾している)わからないのですが、アプリをCD-ROMの1.0.1から、「新しいバージョンがあります」と言われて上げた1.10にした後、 Mavericks対応ドライバーXRD 2.3.2を手動ダウンロードしてインストールし、再度アプリを起動して「アップデートのチェック」をしたところ「最新です」と言われたので、そこで完了としました。そもそもXRDというソフトが何を指しているのかどこにも書いてありませんし、そんな名前のアプリもインストールしていません。 Macにインストールされるのは「ColorMunki」という名前のアプリです。

使用

調整の実行

モニターのバックライトの明るさと色が点灯直後だと安定していないため、調整に誤差がでてしまうので、点灯させて10分〜1時間モニターを使います。 時間はどれくらいがいいのかはわからないのですが(i1で調整をする場合は調整結果のグラフが出せるので、時間を置いて調整してはグラフを見て変化しなくなる時間を調べればよい)、1時間というのは待ち過ぎかもしれません。

調整は、ColorMunkiをUSBに接続して、アプリを起動したらあとはアプリの画面の指示に従えばOK。

調整には「簡単」と「詳細」がありますが「簡単」でOKだと思います。「詳細」は色温度やガンマを数種類の中から選べるようになっていたり、調整方法についてオプションを指定したりしなかったりがコントロールできます。「簡単」のガンマ2.2、色温度6500度K、オプションも自動設定で十分なので「簡単」で調整を行ってよいと思います。 ガンマだ、色温度だなどわかってる人はどっちのコースを選ぶか自体迷うはずがないと思いますし。

画面の指示に従って、まずはモニター前の環境光の明るさを測ります。次に冒頭の写真のようにアプリがオレンジの「枠」を表示してくるのでモニターの上からケーブルを垂らして、センサーが枠の中でモニター画面にぴったりくっつくように置きます。

USBコードの途中に板状の「ストッパー」がついていて、これがモニターの裏側のへりにひっかかってセンサーがずり落ちないようになっています。このストッパーは動かせるのでこれでセンサーがちょうど枠の中に来て、画面にぴったりくっつくように調節します。

あとは「次へ」ボタンを押せば、自動的に測定&調整がはじまります。これは五分強かかりました。この間はMacに触らず放置しておきます。画面全体がいろんな色やいろんな明るさに変わっていきます。センサーでこの色と明るさを測定して、デジタルの入力データとのずれを読み取っているわけです。

測定が終わると、Mac用のICCファイル(カラープロファイル)まで自動生成されOS内部に格納され、そのプロファイルが自動的に選択された状態になります。プロファイルは「System Preferences」の「Displays」の「color」のところで確認出来ます。

この段階で、サンプルの写真が何枚か出て「使用前、使用後」を自由に比べることが出来ます。

この「使用前、使用後」をみくらべて、満足したら「次へ」ボタンを押せば調整終了。

調整後

アプリをインストールするとメニューバーに常駐ソフトがインストールされます。これは一定期間(一週間〜四週間)ごとに調整を催促する機能と、一定間隔(5分〜)で環境光を測定してICCプロファイルを自動調整してくれる機能です。

環境光を定期測定させるためにはColorMunkiをUSBにつないでモニターのそばに置いておきます。このようにColorMunkiは調整する時しか使わないのではなくずっと活躍します。

つないだ状態にしておくと、両側面の白色LEDがゆっくり点滅して動作中とわかります。一定間隔ごとにこの点滅が速くなり、どうやらこの時に環境光の測定をしているようです。メニューバー・アイコンからメニューを開くとこの環境光測定に基づいてICCプロファイルを更新した時刻が表示されます。

使用感

違いの印象

第一印象は「赤くなった」。これで思ったのですがPCメーカーはデフォールトでは色温度9500度K近辺で出しているのかな?と。

次の印象は、解像度が上がったような気がするということ。いわゆる「解像感」でしょう。多分途中の階調が正確に出るようになったことで潰れていたディテールがちゃんと出るようになったのではないか?もちろん「ただの気分の問題」かもしれません。

標準でついているThunderbolt Displayプロファイルと交互に切り替えてみると、青っぽい←→赤っぽいの他、キャリブレーション後の方が色が濃い感じです。コントラストが上がったという感じか。

白い花でほんのり赤い色がついている様子がきれいにでるようになりました。また葉脈みたいのも見えてくるようになりました。

青い色はあまり変化ない感じです。

色温度について

もしかして、PCメーカーは9500度Kで出しているのかという予想について。

OA関連では色温度は9500度Kの青白い白が好まれています。さらに日本人は色温度が高い(≒青い)のが好きです。というか欧米人が暗い(赤い)環境が好きなのかもしれません。

アナログテレビのNTSC方式はアメリカが作った規格ですが、アメリカの元規格では白の色温度は6500度Kと規定されています。ところが日本ではそれを守っていず、明文化もせず、大体9300度K辺りにしています。一説には日本は漢字を映すことになるので色温度が高くないとシャープに映らないから、とか。

最近はPALやアメリカのNTSCを日本のNTSCで放送するのに、デジタルで方式変換をするので色温度まで合わせていますが、昔はアナログで方式変換をしていたので色温度があわせられず、それで海外ドラマは独特の雰囲気の画面だったようなのです(それを「やっぱりアメリカは撮り方が違う!」なんて思っていました)。 さらに今はデジタル方式になっていて、データ内に色温度のパラメーターも記録されているそうなので建前上はどんな色温度で収録されていても日本できちんと再生できるはずです。

大半のユーザーはモニターのキャリブレーションなんかしない、PCメーカーは(だいたい)9500度Kにしている、となるとカメラメーカーもそういうモニター向けに色がきれいに出るようにしてきます。そうでなければユーザーから「色が汚い」と言われて、売れなくなってしまいます。 といっても一方でちゃんとキャリブレーションし、ちゃんと色を見分けてくる「ハイアマチュア」や「プロ」もいるわけなので、まともな色も出さないとなりません。となると「スタンダード」はまともな色、「XXモード」は未調整モニター向け、みたいなことになっている可能性はあります。

例えば、テレビの設定の色は「スタンダード」「ダイナミック」「シアター」など選べるようになっていることが普通だと思いますが、実はこれの「ダイヤミック」辺りは販売店の店頭で派手に見えるようにしている一種の「デモモード」になっています。 素人が店頭など視聴環境が適当なところで見て「きれい!」と思うように派手な色にしているモードがあります。高画質な、その製品本来の画質を求めるなら、家庭では「スタンダード」などで見るべきですし、店頭の試聴室で見比べる時も「スタンダード」にセットし、試聴室の環境の方をちゃんと整える必要があります。

ですから、逆にちゃんと色を見る目を持ってる人が店頭でみて「この色ひどいな」と製品を決めつけてしまってはだめで、ちゃんと設定をみて「スタンダード」になっていることを確認しないと正しい評価にならないのです。

Lumix GX7の「フィルムモード: 風景」はよいか?

LUMIX GX7で「フィルムモード」を「風景」にした場合にシャドウ部分が青くなるホワイトバランスの問題がかなり消えていて、この程度なら問題ないなという感じになりました。

一方赤い花とかはかなり色が濃くなっていて「風景」はちょっとやり過ぎな感じもします。一方、樹の緑とか黄色とかは「風景」でも雰囲気は悪くない。ただ「スタンダード」でも調整前よりきれいになった感じなので、これは…「フィルムモード」は「スタンダード」に戻したほうがいいかな?と迷い始めています。

カラーマネージメント(カラープロファイル)

カラープロファイルの管理は一応ちゃんとやるようにしていました。 私は今はsRGBで揃え、プロファイルを写真ファイルに埋め込むようにしています。WebのW3CはsRGBと規定しているので、Webに公開するなら原則sRGBなのです。またWindowsがsRGB前提なので、何もプロファイルを埋め込まない場合WindowsはsRGBだと思って表示します。 古いブラウザーはカラープロファイルを見なかったので、sRGBでない写真をネットに出すと色がちゃんと伝わらなかったのです。

最近のブラウザーは大抵ちゃんとカラープロファイルを解釈するようになったので、AdobeRGBで写真を公開しても(見る人のマシンがちゃんとカラープロファイルの設定をしていれば)うまく色が伝わります。

それでもAdobeRGBのモニターを使っている(そして正しく設定、調整している)人は少数でしょうから、ほとんどの人が自分のマシン側でsRGBに変換して見ている現状をよしとするのか、自分でsRGBに変換して色管理して全員そろってsRGBでみているようにするか、価値判断が別れるところです。

上記ページの記述は一応Windows 8、MacはLionまで対応しているようです。

私が、今Windows 8.1とMavericksでそれぞれ最新のSafari、Chrome、Firefox、IE 9で試してみると書いてあることと微妙に違います。 古いWindowsユーザーが残っていることを考慮して、このサイトの筆者は「カラープロファイルを埋め込まないで、sRGBで仕上げるのがもっとも無難」と書いていますが、最新のOSを見ると「カラープロファイルを埋め込んだsRGBがもっとも無難」に見えます。

またFirefoxを about:config で設定変更すると、プロファイルなしの写真をsRGBと仮定してカラーマネージメントするのでFirefoxがもっともよいと書いていますが、現在のMacのSafari 7.0で試してみると同様にプロファイルなしの画像をsRGBと仮定して取り扱っているようです。 Firefoxでは設定変更が必要ですがSafariでは不要なのでSafariの方がよいように思います。

WindowsではGoogle Chromeがカラーマネージメントしてないと書かれていますが、今の最新バージョンだとプロファイルなしのsRGB画像も含めてもっともうまくカラーマネージメントしているように思いますので、私はWindowsならChromeをお勧めしたい。

・写真をWeb(HTML)で公開する側
プロファイルを埋め込む。古いWindowsや、今のモニター環境の大半がsRGBなのでsRGBが無難か?
・写真を見る側
MacならSafari、WindowsならGoogle Chromeがもっともうまく対処してくれる。特にプロファイルなしの場合sRGBと仮定してくれるようだ(Firefoxでも設定でそのように出来る)

カラーキャリブレーションするきっかけ

モニターのキャリブレーションについては写真をやるようになってから、もやもやと気にしてはいました。ただ、Macを選んでいればそんなに大きくずれてはいないだろうと思っていました。 それが今回キャリブレーターを買うことの背中を押したのは、写真家の塙先生のtweetでした:

塙先生も確かMac(iMacとPowerBook Pro)です。

塙先生はどんなキャリブレーターを使っているのでしょうか。

色域比較

sRGBとの比較

AdobeRGBとの比較

キャリブレーション後のThunderbolt Displayの色域(白枠線)と各種カラープロファイル比較

OS付属のColorSync Utilityを使って、作成されたモニターのICCファイルを開き「比較用」として固定して、sRGB、AdobeRGBと比べてみました。白い線の格子がキャリブレーション後のモニターのICCファイルです。

これをみるとThunderbolt DisplayはsRGBよりわずかに広い。AdobeRGBに対しては赤はほぼ同じ、青はモニターの方が少し広い。緑についてはAdobeRGBが広い、ということでAdobeRGBについては緑が狭いということでちょっと適合しないようです。

迷った他社製品

購入を迷った他の製品はSpyder4PROdatacolor社)です。

精度や操作性は大差ないかもしれません。環境光による自動調整をやるのかどうか不明。一方iPad、iPhoneのキャリブレーションも出来るようでiPadを写真吸い上げに使っている私としてはちょっと魅力です。

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